どの道を行こうか?

2021年4月から改正高齢者雇用安定法が施行され、企業は社員が70歳になるまで雇用を確保することを求められるようになりました。これまでは定年制の廃止、定年の引き上げ、継続雇用制度の導入のいずれかの措置によって65歳まで雇い続けることが企業に義務付けられていました。今回の改正はこれを70歳まで延長することが努力義務となり、また業務委託契約の締結や会社などが実施する社会貢献事業に従事できる制度の導入が新たに追加されました。

法律の改正に対して、「70歳まで働ける!」と思うか「70歳まで働くのか…」と思うか、受け止め方は様々でしょう。いつ仕事を辞めるかは基本的には自分で決めることはできますが、長い間組織に所属して働いてきた人にとって定年後をどうするかは本当に迷うところです。

経験を積んだシニアでも、就職活動をする大学生や、転職しようかどうしようかと悩む20代、30代と同じように迷い、試行錯誤してしまいます。

キャリアカウンセリングに関する研究などで知られる米国のカウンセリング心理学の専門家、ナンシー・シュロスバーグという人は、リタイア後の人生について、多くの定年退職者は次のいずれかの道を歩むとしています。

続投する人(continuers): 定年までにやっていたこと(仕事だけでなく家事やボランティア活動なども含めて)をリタイア後も生活の中心に据えて、それまでに身につけたスキルや経験、興味、価値観と共に生きる人。

冒険家(adventurers): 定年を機に新たなことに取り組む、新しいスキルやライフスタイルが求められる新たなチャレンジ(収入のあるなしに関わらず)をする人。

探索者(searchers): 定年前の過去とは決別したものの、これだというものや、新しい居場所はまだ見つからず探し続けている人。

楽天家(easy gliders): 定年を迎えたことを前向きに受け入れ、時間にしばられずに、好きなことや興味のあることに取り組みながら定年後を楽しむ人。

世捨て人(retreaters): 新しい生活や、何か意味を感じられる人生に向かって行くことは諦めてしまった人。

道はどれか一つとは限らず複数の組み合わせとなることもあります。例えばこれまでの経験をいかして「続投」しようと考えていたのに、そのような機会が見つからず当面は「探索者」となるというような例です。シュロスバーグはどれがよいということはもちろん言っていません。

定年により自分の日々の生活や気持ちにさざ波がたつような感じになり、それによって自身のアイデンティティを失う、自分の価値が認められていない、どこにも所属しておらず何も意味のあることをしていないという思いが沸き上がることもあるとも言っています。

このような感覚は「会社人間」が多い日本ならではの現象かと思っていましたが、そうではないようです。

定年後に限ったことではなく、そもそも人生には多くの選択肢があるので、誰でも節目、節目で迷います。選択肢があるということは可能性が広がっていることなので、むしろ前向きにとらえてもいいのかもしれません。「これだ!」というものがすぐに見つからなくても時間をかけて決めていけばよい、そう思うと気持ちがラクになります。

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