3,600万人から考えたこと
2021年春、コロナ禍でワクチン接種を進めるにあたり、65歳以上の高齢者が優先接種の対象者となりました。ニュースなどで対象となる65歳以上は約3,600万人と報道され、これまであまり意識していなかった高齢者数を多くの人が知ることになったかもしあれません。
少子化と併せて高齢化ということばが頻繁に使われるようになってからだいぶ年月がたちます。高齢化の程度を表す高齢化率とは、総人口に占める65歳以上の人口の割合です。
総務省が2020年9月に推計した高齢者人口は3,617万人と過去最高となり、総人口に占める割合は28.7%となりました。出生率の低下とそれに伴う子供の数の減少により、15歳未満は1,504万人(11.9%)、労働力の中核となる15歳から64歳は7,465万人(59.3%)となっています。
「高齢者」とよく口にしますが、そもそも高齢者の明確な定義はどのようなものなのでしょうか。
内閣府が発表した「令和2年版高齢社会白書」によると「高齢者の用語は文脈や制度ごとに対象が異なり、一律の定義がない」そうです。このためこの白書においても、各種の統計や制度の定義に従う場合以外は、「一般通念上の「高齢者」を広く指す語として用いることとする」と書かれています。政府の高齢社会対策大綱でも、「65歳以上を一律に「高齢者」と見る一般的な傾向は、現状に照らせばもはや現実的なものではなくなりつつある」と言及されているそうです。
なあーんだ、65歳以降が高齢者と明確に決められていると思っていたけどどうやら違うらしい、という感じです。確かに平均寿命が延びている中で、心身ともに健康で、見かけも若い60代後半を高齢者と見なすかどうかは意見が分かれるところでしょう。
とは言っても実際に高齢化率の算出には65歳以上の人口が使われているわけです。また健康保険制度でも65歳から74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者として異なる制度のもとで運用しています。
高齢者の年齢区分をどこで切るかは別にして、日本で高齢化が急速に進み、現在では高齢化率が高い「超高齢化社会」となり、経済的にも社会的にも様々な影響がみられることは多くの人が認識していると言えます。
特に1947年から1949年のベビーブームで生まれた団塊世代が75歳以上になり、75歳以上の人口割合が20%となる2025年、そして団塊世代の子供たちの団塊ジュニア世代(1971年から1974年生まれ)が65歳以上となる2040年、この2つが社会保障支出や介護サービスの担い手などの問題の懸念が特に大きくなる時期とされています。これを指して2025年問題、2040年問題とも言うようです。
「令和2年版高齢社会白書」によると2040年の65歳以上の人口は3,920万人と推計されています。高齢者が現在の3,600万人よりさらに300万人多くなった時、世の中はどのように変わっているのでしょうか。そして現在3,600万人いる高齢者たちが20年後の社会をよりよいものとするために今できることは何なのでしょうか。