シニアインターン

少し前のことになりますが、ベテラン社員が社外でインターンシップを行うという記事を目にしました。インターンシップ(職業体験)というと、若い人たちが就職活動の一環として企業で一定期間実際の仕事を経験して将来のキャリアを決める上での参考にする、というイメージがあります。「シニア」と「インターン」という2つのことばは本来結びつくものではないようにも思えます。

記事にあったインターンシップの仕組みはベテラン社員が地方の企業や自治体といっしょに地域活性化プロジェクトを推進する活動に参画して、新たなキャリアのヒントにしようというものです。ベテラン社員であっても未経験分野の仕事を体験するという点では確かにインターンシップとも言えそうです。

受け入れる側の組織にしてみれば、長い経験、特に大企業での多様な経験を持つベテランから様々なノウハウをもらえる、異なるバックグラウンドゆえに例えば地方在住者には思いもかけない視点を提供してくれるなど、インターンというよりはアドバイザーとして貴重な存在になるかもしれません。

定年の延長や再雇用で65歳どころか70歳まで働き続けることが普通になってきた世の中で、職種や所属する組織、あるいは起業や自営など、ともかく何かを変えていかなければキャリアを維持し続けることが難しくなってきています。そして多くの人がこのことを意識し始めています。新しいことに取り組むためにはそれなりの助走が必要になるでしょう。

企業だけでなく、政府や自治体もこの状況は当然認識していて、シニアのキャリアについてはそれなりに力を入れているように思えます。生涯現役で働けるように65歳以上のための就職説明会があったり、意識改革のためのセミナーやスキル研修があったり、ボランティアなどの社会貢献を支援する活動があったり。シニアインターンもこの動きの中で生まれてきたものと言えそうです。大学生のワンデーインターンは時に問題視されますが、シニアにとっては例えば2、3日コンビニで仕事を経験するだけでも想像していた世界と実態とのギャップを理解することができるかもしれません。

「越境」ということばをいつ頃からか人事やキャリアの分野で耳にするようになりましたが、シニアのインターンシップはこの「越境」の一つと言ってよさそうです。これまで自分がキャリアを積んできた本業とは違う分野に入り込んでいって新しい経験や知見を得ていくことが「越境」です。「越境」と聞くと「その昔の越境入学しか知らないよ」というシニアの方もいるかもしれませんが、従来からの境を越えるという点では同じですね。

シニアインターンというと『マイ・インターン』というアメリカ映画を思い起こします。アン・ハサウェイがCEOを演じるファッション通販ビジネスのスタートアップ企業にインターンとして採用された70歳の男性(ロバート・デ・ニーロ)が、初めはとまどいながらも少しずつ存在価値を発揮して行きます。若者たちに恋愛アドバイスをしたり、CEOの相談役のような役割を担っていくストーリーはなかなか味わいがあってほっこりさせられます。このように境を越えたり垣根をとっぱらったりするために、主人公の70歳の男性は本当に前向きにひたむきに努力を重ねて頑張っています。

生涯現役でいるかどうかはそれぞれが決めることでしょうが、より長く働くためにはただじっとしているのではなく、今ある機会をともかく活用してみることが大切だと思うのです。

大きく変わってきている社会の状況やそこに生まれている新しい動きや考え方を理解しながら、自分が活躍できる場所をちょっと探しに行ってみてはどうでしょうか。

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