シニアと経済格差

年の瀬の12月。様々なニュースが報道されていますが、クリスマスや新年に向けて消費が盛り上がる時期のためかお金や経済状況に関するニュースが目立つような気がします。

その中で高齢者の年金受取りに関するニュースを目にしました。年金は偶数月の15日に銀行口座に振り込まれます。年金支給日を心待ちにしている高齢者はこの日朝から銀行のATMに並んで支給された年金をおろしていました。働いている人たちも毎月の給料日を心待ちにしていると思いますが、必ずしも十分とは言えない年金で2か月分の生活を賄っている高齢者にとっては年金支給日の待ち遠しさは現役世代の給料日の比ではないような気がします。おろした年金で日ごろは買わない甘いものを買ってちょっと贅沢気分を味わうという人もいました。

シニアの中には現役時代と同じように毎月25日にお金をおろしてその後1か月の生活に使うという人もいると思います。おそらくそれは会社員として40年近く厚生年金に加入したそれなりに余裕のあるシニアの話かもしれません。

年金支給額は個人差が本当に大きいです。男性会社員と専業主婦の妻のモデル年金が月額20万円余りというのをよく聞きますが、それだけもらっている人は実は多くないはずです。特に厚生年金に加入せず国民年金のみを受け取っている高齢者の年金額は1人分の生活を維持することも困難な場合があります。

厚生労働省の令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況によると厚生年金受給額平均は男性が約169,000円、女性は約109,000円となっていて、男女の給与格差や勤続年数の違いを反映しています。他方で国民年金受給額平均は56,000円程度。国民年金は満額だと約66,000円ですが、満額を受け取っている人は少数だという話を年金事務所で聞いたことがあります。

ほぼ同じ頃に超高級老人ホームを紹介するテレビ番組を見ました。入居一時金が何千万円もして、さらに毎月の費用が30万円前後というかなりお金のかかる施設です。施設内にはプールやスポーツ施設、シアタールームなどもあり老後の豊かな生活を充実させることのできるほとんど全てが提供されている感じでした。広いホールで社交ダンスに興ずるシニアもいました。

経済格差の問題は今に始まったことではありません。日本の場合他の先進国に比較すると格差は小さいといわれていますが、それでも年収がずっと500万円程度だった人と、1,500万円以上の給与をずっと稼いできた人との格差は30年、40年と働き続ける間にかなりの開きとなるはずです。

「ジニ係数」という所得の分布の均等度合いを示す指標があります。ジニ係数の値は0から1の範囲で、係数が0に近づくほど所得格差が小さく、1に近づくほど格差が大きいことを示しています。日本の2021年のジニ係数は0.38とそれなりに高くイギリスに近くなっていました。他方で社会保障が充実しているとされる北欧諸国は0.3以下と低めです。

高齢者の場合、経済格差は固定化していてこれを変えることはほとんど不可能でしょう。年金以外の決まった収入があるわけではなく、働いていたとしても高齢者で非正規の立場だと昇給も望み薄で年金を補う程度の収入をやっと得ているというのが実情でしょう。起業家として成功したり、役職に就いて大きく昇給したり、転職で給与が大幅にアップする可能性がまだまだある現役世代とは違います。

シニアの経済格差の話を聞くたびに思うのは「応分の負担」という話です。医療費の自己負担率、介護保険料の収入による段階、介護保険を利用した際の自己負担割合など再考すべき問題は多々あります。いつまで仕事を続けるかは個人の判断ですが、企業の役員として高齢になっても多くの収入を得ることができる人や事業に成功して大きな財産を築いた人がそれなりの負担を求められることは当然とも思えます。今も収入による自己負担率の違いはありますが、それが妥当な水準なのかどうかはさらに検証が必要ではないでしょうか。

昇給率は上がってきているものの物価上昇には追い付かず大変な思いをしている現役世代も多くいます。この現実を見過ごすことなく、もし可能な状況にあればシニアも支えられる側から支える側に回るなど、シニアができることをこれからも考えていきたいと思います。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です