下り坂ではない人生

シニアの人生について語られる場合によく耳にするのが「下り坂」、「下山」など人生を山登りに例えた表現です。

人生を山登りに例えた時、シニアたちにとって「頂上」はいつだったのでしょうか。

それは仕事人生で自分が一番輝いていた時や、仕事に乗りに乗って全力疾走していた頃かもしれません。家族と一番幸せな時間を過ごしていた時代が頂上だったと思い起こす人もあるでしょう。定年退職の日がまさに頂上に立った時だったと振り返る人もいるかもしれません。それよりずっと前に頂上に到達していた、役職定年で管理職から降りた時から、自分の人生は下り坂になったと感じる人もいそうです。

人生を山登りに例えるのは、国土の約4分の3が山地である日本ならではと言えるかもしれません。また人生の中で仕事に重きを置きがちな傾向とも関係しているのではないかと思います。

セカンドキャリアについて考える研修などで、それまでの人生の様々な場面での自分の気持ちの満足度や充実度を山や谷で表す「ライフラインチャート」を描いたことがありませんか。仕事人生には様々な変化や転機がありますが、チャートという平面に描くとどうしても上り、下りになりがちです。

けれども実際の人生はもう少し複雑です。一人の人が築いてきたキャリアについて考えても、それはキャリア上の発達や成長の道のりで、キャリアそのものには本来アップもダウンもないのではないでしょうか。でも多くの人は何気なく「キャリアアップ」や「キャリアダウン」という表現を使います。社会的な評価や他人にとってわかりやすい職歴や経歴だけに目を向けて「キャリアアップ」ということばを使っていると、肩書がなくなった定年後はひたすら下るだけに思えてしまうのかもしれません。

上り、下りにとらわれない見方をすると、人生はマラソンという例え方もあります。長いレースをうまくペース配分しながら完走するイメージでしょうか。人生は大海原を漂うようなものと例えることもできそうです。陸に近ければ灯台が見えることもありますが、遠洋に出ればなんの道標もなく、時には嵐に出会うこともあります。でも経験を積む中で何らかの術を身につけることができれば、自分自身で向かう方向を見定めることができるかもしれません。太平洋をヨットで横断するような感じです。

人生を川の流れに例えるならば人生は川上から川下への旅となるのでしょう。岩あり、滝ありで危険もありますが、分岐点でどちらの方向へ行くかの選択ができるかもしれません。大海と異なり時には両岸の景色を見ることもできます。

人生をジェットコースターに例えると急な上り下りだけでなく、旋回やら反転もありひやひやの連続です。自分でコントロールできることはほとんど何もありませんが、最後は必ずきちんとスタート地点に戻ることができます。

これらの例えから気づかされるのは、人生をいくつかの視点から見ていることです。つまり、どの程度自分でコントロールできるか、方向が示されているか、どの方向に行くか自分で選択できるのか、進むスピードの速い、遅い、リスクの大小、そしてスタート地点とゴールの捉え方などです。

シニアの人生は頂上からの下山ではなく、ましてや余生でもゴール到着後のクールダウンの走りでもありません。 ワークキャリアのゴールは既に通過したかもしれませんが、シニアのライフキャリアはまだまだ続きます。

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